中小企業の経営者の皆様は、日々の業務に追われる中で『売上不振』や『人材不足』といった深刻な課題に直面し、気軽に相談できる『相談相手の不在』に悩むことも少なくないと感じます。将来を見据えた事業計画の必要性を感じつつも、どこから手をつければ良いのか分からず、後回しになっていませんか。
≪このブログで伝えたいこと≫
・事業計画をシンプルにまとめるための4つのキーワード
・計画の漏れや重複を防ぐ「MECE」の考え方
・作成した計画を補助金申請書などに応用する方法
・具体的な行動計画に落とし込むためのヒント
目次
- なぜ、事業計画の策定は後回しにされがちなのか?
- 計画の骨格を作る!魔法の4つのキーワードとは
- 計画の説得力を高める「MECE」という考え方
- 事例で納得!小さな飲食店の売上アップ計画
- このフレームワークは万能!様々な計画書への応用
忙しいから 楽しいに。~ 未来が見える(だから)笑顔になれる ~
皆様の成長促進パートナー 中小企業診断士のまっちゃんです。
中小企業の現場を駆け回り、組織改革や事業承継などの課題解決をお手伝いしています。
さて、今回の経営ブログでは、複雑に思える事業計画を、たった4つのキーワードで驚くほどシンプルに整理する方法を紹介いたします。
1. なぜ、事業計画の策定は後回しにされがちなのか?
「事業計画書を作らなければ…」多くの経営者様がそう思いながらも、日々の業務に追われて、なかなか着手できずにいるのではないでしょうか。売上管理、従業員の労務、資金繰りなど、目の前の課題をこなすだけで精一杯なのは、私も現場で痛いほど感じています。
計画の策定が後回しになる理由は、大きく分けて3つあるように思います。一つ目は、「何から書けばいいか分からない」という点です。壮大な未来図を描こうとするあまり、かえって筆が止まってしまうのですね。二つ目は、「完璧な計画書を作ろうとしすぎること」。網羅的で、誰が見ても納得するようなものを作ろうとすると、ハードルが非常に高くなってしまいます。そして三つ目は、「作ってもどうせ計画通りにはいかない」という一種の諦めです。市場の変化が激しい現代において、その気持ちも分からなくはありません。
しかし、事業計画は未来を正確に予言するためのものではなく、進むべき方向を示す「羅針盤」のようなものだと、私は考えています。羅針盤があれば、たとえ嵐に見舞われても、進むべき方角を見失わずに済みます。まずは完璧を目指さず、自社の現状と進むべき方向を整理することから始めてみませんか。

2. 計画の骨格を作る!魔法の4つのキーワードとは
では、どうすれば事業計画をシンプルに考えられるのでしょうか。私がいつもお勧めしているのが、次の4つのキーワード(箱)を用意して、それぞれを埋めていく方法です。これだけで、計画の骨子が出来上がるから不思議です。
①現状と課題
今、あなたの会社はどのような状況で、どんな問題点を抱えていますか?
※例えば、既存顧客の高齢化で売上が減少しているなど
②課題の解決策
その課題を解決するために、どんな方向性を目指しますか?
※例えば、若者向けの新しい客層を開拓するなど
③その解決策の具体的な取り組み
解決策を実現するために、具体的に何をしますか?
例えば、SNSでの情報発信、若者向けの新メニュー開発、内装の一部リニューアルなど
④その取り組みの効果
具体的な取り組みによって、どのような良い結果が期待できますか?
※例えば、新規顧客が月20人増加し、売上が10%アップするなど
いかがでしょうか。
この4つのステップで考えると、頭の中がスッキリと整理されていくのを感じませんか?
重要なことは、いきなり「具体的な取り組み」から考えないことです。まずは「現状と課題」を正しく認識し、そこから順番に考えていくことで、一貫性のあるストーリーが生まれます。この4つのキーワードは、思考を整理し、計画の骨格を明確にするためのツールになると思います。

3. 計画の説得力を高める「MECE」という考え方
4つのキーワードで計画の骨格を作ったら、次はその中身をより確かなものにしていくと、さらに内容が濃くなります。
その方法の一つに、例えば、「MECE(ミーシー)」という考え方が挙げられます。コンサルティングの世界ではよく使われる言葉ですが、初めて聞く方も決して難しいものではありません。「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字を取ったものです。もっと短い言葉で整理すると、モレなく、ダブりなくです。
それでは例えば、「具体的な取り組み」を考える際に、MECEを意識してみたいと思います。「若者向けの新メニュー開発」と「SNSでの情報発信」という取り組みを考えたとすると、「SNSでの情報発信」の中に「新メニューの紹介」も含まれたとしたら、少し重複(ダブり)があるかもしれません。また、「内装の一部リニューアル」だけでは、若者に響く取り組みとして十分だろうか?(漏れはないか?)と考えてみるといった具合です。MECEを意識することで、計画の解像度が上がり、より具体的で説得力のあるものになります。4つのキーワードで大枠を捉え、MECEで細部を検証する。この両輪で、より具体的な事業計画が出来上がってくると思います。

4. 事例で納得!小さな飲食店の売上アップ計画
具体的な事例を挙げてみたいと思います。創業30年、地域に愛されてきた洋食店さんのケースです。
①現状と課題
・昔からの常連客が高齢化し、客足が減少傾向
・ランチタイムはそこそこだが、ディナータイムの売上が弱い
・先代からの味は守っているが、メニューに代わり映えがない
②課題の解決策
・平日のディナータイムを強化し、新たな顧客層として30代〜40代の働く女性を取り込む
③その解決策の具体的な取り組み
・商品
→野菜をたっぷり使ったヘルシーなディナーセット(1,800円)を開発する
→ワインに合うおつまみメニューを5品追加する
・販促
→Instagramアカウントを開設し、新メニューやお店の雰囲気を週3回投稿する
→地域のフリーペーパーに広告を掲載する
・店舗
→照明を少し落とし、落ち着いた雰囲気の内装に一部改装する
→カウンター席にコンセントを設置する
④その取り組みの効果
・ディナータイムの客数が1日平均5人増加する
・客単価が500円アップする
・結果として、月間の売上が15万円増加することを見込む
どうでしょうか。4つのキーワードに沿って整理するだけで、誰が読んでも「なるほど、これなら売上が上がりそうだ」と納得できるストーリーが描けるイメージを感じますでしょうか。ぼんやりとしていた課題が明確になり、やるべきことが具体的に見えてくることが、このフレームワークの最大のメリットだと思っています。

5. このフレームワークは万能!様々な計画書への応用
4つのキーワードを使ったフレームワークの素晴らしい点は、汎用性の高さだと思っています。この考え方に慣れると、様々な種類の計画書作成に応用できます。
例えば、、
①経営改善計画書
金融機関に提出を求められた際も、この型に沿って書けば、窮状(現状と課題)と、それをどう立て直すか(解決策と取り組み)、そして改善の見込み(効果)を伝えられます。
②補助事業計画書
補助金や助成金の申請では、事業の目的や遂行方法、期待される効果を審査員に分かりやすく説明する必要があります。なぜこの事業が必要で(現状と課題)、何を目指し(解決策)、何を行い(取り組み)、どんな成果が見込めるのか(効果)を論理的に示すことができます。
③創業計画書
これから事業を始める方がつくる創業計画書も同様です。市場の機会(現状と課題)を捉え、どんな事業コンセプト(解決策)で、どのような商品・サービス(取り組み)を展開し、収益を上げていくのか(効果)を説明するのに最適です。
どんな計画書であっても、基本となる構成は「現状→課題解決→具体策→効果」という流れです。シンプルな型だからこそ、分かりやすく説得力がある計画書の土台になると思います。

今回は、たった4つのキーワードで事業計画をシンプルに作成する方法についてお話ししました。
①現状と課題
②課題の解決策
③その解決策の具体的な取り組み
④その取り組みの効果
この流れで考えることで思考が整理され、一貫性のあるストーリーを描くことができると思います。さらに、「MECE(モレなく、ダブりなく)」を意識することで、計画の解像度と説得力を高めることができます。
まずは、難しく考えずに紙とペンを用意して、「①現状と課題」だけでも書き出してみてください。
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