こんにちは。
DSSで助手を務めている松山と申します。今年もよろしくお願いいたします。
前回少し触れましたが、今回は台湾の火鍋について綴ってみようと思います。
ざっくりですが火鍋は中華圏の鍋料理のことを指します。文字通り鍋に入った材料に火をかけて食べる料理のことで、基本的には日本の鍋も仲間でしょう。アジアの各地で愛されている料理だと思います。
火鍋の材料や味付けは、その土地独自のものが選ばれるので種類は豊富、各地の名物鍋というものもたくさんあります。
特に台湾社会は様々なエスニシティによって形成されているので、火鍋もバラエティに富んでいます。台湾式のものや中国式のもの、伝統的なものから現代アレンジされたもの、庶民的なものから高級食材を使った豪華火鍋まで、オールシーズン、どこの場所でも手軽に食べることができます。そもそも火鍋は人気料理なので常に競争に晒されており、栄枯盛衰が激しいジャンルです。気に入ったお店に次回訪れると無くなっていることも多々あります(特に食べ放題の店)。
台湾も野菜の価格が高騰しているので、火鍋屋さんも苦労していると思いますが、人気店は変わらず盛況です。私のお気に入りの店も大分値上げしましたが、クオリティを保ってくれているので訪台のたびに通わせていただいています。
火鍋は自分のような旅行者にとってもおススメの料理です。不足しがちな野菜をとれるし、自分好みの味に調整もできる(火鍋は基本的に自分でつけダレを作ります)。火を通すので弱った胃腸に優しいし、食あたりも防ぐことができます。台湾の料理は油を使ったものが多いので、滞在期間が長くなってくるとさっぱりしたものが恋しくなります。特に生野菜が食べたくなるのですが、満足したものにはなかなかありつけません。
つけダレを自分の好みで作れるのが魅力。火鍋屋さんには必ず「たれステーション(勝手に通称:じゃんすて)」があります
そこで救世主となるのが火鍋です。生ではありませんが野菜もたくさん食べられるし、お肉もシンプルに食べられるのでありがたい。お店によっては飲み物やアイスクリーム、デザートも飲み食べ放題なので色々楽しめちゃいます。台湾人との会食でも火鍋をリクエストすれば、喜んでお気に入りの店に案内してくれると思います。
前記しましたが、台湾では現地の人たちの生活、文化、ルーツの多様性から火鍋の種類も多種多様で、選び放題です。我々旅行者も、自分の好みの火鍋、興味を持ったものをあれこれと楽しむことができます。訪台の際に一度は試していただければと思います。
せっかくなので少しだけですが、おススメの火鍋を紹介させていただきます(カテゴライズは自己流です)。
★漢方系のスパイスが効いた火鍋
豚骨や鳥骨、海鮮ベースのスープに様々なナツメやクコ、花椒、クミンなどの漢方を入れて作った滋味あふれる鍋。鴛鴦火鍋(仕切った金属製の丸鍋の中を金属製の板で仕切って、2種類のスープを楽しむ鍋。鴛鴦はオシドリの意味。陰陽(いんやん)鍋とか言ったりします)スタイルで提供されるものが多いかも。鴛鴦火鍋には基本的には麻辣と不辣(辛くない)スープが入るので、辛い漢方味と辛くない漢方味の両方が楽しめます。また最近の鴛鴦火鍋は、2種類のスープを全てカスタマイズできる店も増えています。
「鴛鴦火鍋」は二種類の味を楽しむことができます。太極思想の「陰陽」に見立てて、辛くないほうが「陰」で辛いほうが「陽」という具合でしょうか
因みに一時期、3種類の味が楽しめる仕切りを3つに分けた「ベンツ鍋」というものも流行りました。鍋を上から見ると、メルセデスベンツのエンブレムに似ているからついた愛称です。恐らくですが店にとってはコストアップにつながるし、お客にとっては食べにくいので不評だったんでしょうね。もう見かけません(DSS調べ)。
台湾の老舗有名店だと「天香回味」でしょうか。日本にも支店があります。モンゴル式と銘打った漢方スープは、日本人の味覚にも合う味でとても美味しいです。漢方というよりスパイシーな風味と言えば良いのでしょうか?新疆の羊肉串が好きなら絶対に気に入ると思います。カールのカレー味って言えば良いのかなぁ?
ちょっと違うか?
食後は上着にファブリーズ必須です笑
★中国東北地方の火鍋
メインは羊肉か豚肉で、発酵させた白菜(酸菜)と一緒に食べることが多いです。その場合は「酸菜白肉鍋」と表記されている場合もあります。
真ん中に高い円柱がそびえ立っている鍋を使う店もありますね(中国東北部では一般的)。
こんなやつです(@台電勵進餐廳)
鍋の具材やスープの味もシンプルですが(しゃぶしゃぶのように食べます)、肉と発酵白菜の組み合わせが絶品の美味しさ。個人的には豚肉が一番合うと思います。
台湾では昔からある定番の鍋で、ローカルのお店があちこちにあります。台北で有名の老店は「長白小館」でしょうか。
個人的には台北にある「台電勵進餐廳(台電火鍋って呼んでます)」がお気に入りです。台湾電力の敷地内にある人気の火鍋屋さんなのですが、注文はシンプルで肉の種類を選ぶだけ。肉は牛、豚、羊を選べますが、EVERYTHINGでもOK。因みに肉も副菜も食べ放題です。ローカルに混じってワイワイ食べられるのもおススメの理由です。
★中国四川地方の麻辣火鍋
こちらも鴛鴦スタイルの火鍋が一般的で、辛いスープはとことん辛く、辛くないスープはとことんマイルドな味に仕上げて提供する店が多い気がします。それぞれのスープの味にメリハリが効いています。
台中発祥の人気火鍋店「鼎王麻辣鍋」。麻辣スープは辛いだけではない滋味ある美味しさで唸らされます
辛いスープは「麻辣」ですから、辛くて痺れます。辛い(辣)のは大量の唐辛子、痺れる(麻)のは大量の花椒、そして辣油をフルブーストでびしゃがけ。ノーガードで食べると一瞬で口内と味蕾が破壊されます。ただ台湾の麻辣火鍋はしっかり下味も効いているので、辛くて痺れるだけではありません。辛いのが得意な人なら美味しくいただけるのではないでしょうか。私は辛くないスープ9割、麻辣スープ1割ぐらいのバランスでしゃぶしゃぶして楽しんでいます。
★鶏鍋
火鍋の具材としては、人気の牛肉や定番の豚肉、羊肉に比べて少しだけ地味な印象の鶏肉ですが、鶏には独自路線の鍋料理があります。
鶏肉塊を土鍋で豪快に煮込みまくった「鶏ドロドロスープ」の鍋です。自分で具材を鍋に入れて煮込むわけではないので、火鍋とは異なるカテゴリーに分類されるものかもしれませんが、とても美味しいので仲間に入れてあげてください。
その味はずばり京都ラーメンの名店「天下一品」のこってりスープです。
台北にある「驥園川菜餐廳」は美味しい鶏鍋が食べられる老舗のお店なので、こちらをおススメしたいです。
「驥園川菜餐廳」の鶏鍋定食
★台湾ローカルの火鍋
台湾南部に移動して食べる火鍋は一味違うものになります。
台南や高雄、屏東方面では、あちこちで海鮮火鍋を楽しめます。具材がシーフードというだけでなく、するめや小海老、小魚などで出汁をとったスープを使うので、日本人の味覚にも合うと思います。
また前回触れた台湾中南部の都市、嘉義市にある「林聰明沙鍋魚頭」の火鍋も外せません。こちらの「砂(沙)鍋魚頭」という魚の頭が入ったごった煮鍋は中国から伝わった料理らしいですが(浙江省ルーツの友人にゴリゴリ言われた)、見事にカスタマイズされて台湾式の味に昇華しています(と思います)。
上手く言えないのですが、私的にはこの火鍋は台湾の味というか、台湾そのものを表しているというか、食べた瞬間「ああ、台湾の味だ」と思わされる不思議な魅力を持っているんです。
★食べ放題系の店
みんな大好き「吃到飽(つーだおばお)」。食べ放題の火鍋屋さんも大人気です。お値段は今だと大体500元前後からでしょうか(日本円で2,500円)。
お肉はもちろんのこと、野菜や練り物、春雨、麺やごはんなどの炭水化物、飲み物やアイスクリーム、デザートまで、全てが食べ放題になっています。日本だと「しゃぶ葉」さんのようなイメージでしょうか。
吃到飽(食べ放題)の火鍋屋さん。台北駅前にあった店ですが既に閉店
ただ、台湾は競争が激しいので、各店の食べ放題メニューは豊富で、サービスもより工夫を凝らしている気がします。例えば多くのお店の看板には「ハーゲンダッツ食べ放題!」、「Niseko食べ放題!(台湾で人気の乳製品ブランドのアイスクリーム)」、「モーベンピック食べ放題!(台湾で昔から人気のスイスのアイスクリーム)」と宣伝文句が描かれています。台湾では火鍋の〆にアイスクリームはマストなので、どこの店も競ってサービスをアピールしています。
まあ。火鍋料理とは直接の関係はないんですけどね笑。
台湾では食べ放題スタイルは大人気で、昔は火鍋を含めたあらゆるジャンルの食べ物を一度に楽しめる店もありました(全盛期の上閤屋とか)。その名残なのか、注文式の火鍋さんでも飲み物やちょっとした副菜、炭水化物、デザートなどは無料というスタイルをとる店は多いと思います。
私自身は年々食が細くなっているので食べ放題系の店は行かなくなっていますし、1年経たずに畳んでしまう店舗も少なくないので、定番はありません。友人に誘われたらついて行くぐらいでしょうか?
★一人(火)鍋
台湾では自分専用の鍋で自由に楽しむことができる「おひとりさま鍋」も人気です。好きなものを好きなスタイルで楽しめる火鍋、鍋奉行にああだこうだと言われる心配もありません。値段もリーズナブルだし、メニューもシンプル、注文もしやすくてお店の敷居も低いです。
日本でもこのスタイルの火鍋屋さんを見かけるようになりましたね。
日本人も結構ハマる形式の火鍋だと思います。
台北駅北にある老舗の一人火鍋屋さん「天喜迷你石頭火鍋」。昔からある店ですが味は変わらず、外から店内の様子も見れるのでふらっと入店しやすいです
★その他の火鍋屋さん
昔からある火鍋チェーンの「銭都」、生まれては消える新しい味&スタイルの火鍋屋さんなど、紹介しきれないお店はいくつもあります。
前回触れた「楽崎火鍋」は後発の火鍋チェーンですが、じわじわ定着した感があります。台湾にしては出店攻勢が遅いというか慎重なので、軸足をしっかり置いた経営に徹しているのかもしれません。
「楽崎火鍋」も一人鍋で楽しめます(大鍋もあります)。この店は料理もサービスも品質が安定していて良い印象です
台湾のお店は「人気上昇=即☆拡大路線」となりがちで、その後に縮小撤退に舵を切ることが多いです。イケる時にイケというのが経営の基本スタンスで、その結果、オペレーションがガタガタになったり、過剰投資になったり、内輪もめが起こったり(日本より家族経営的風習が強いのでびっくりするような私的揉め事で会社が傾いたりします)。楽崎火鍋はそんな香りがしないので、気になっています。一応、経営コンサルの視点から笑。
まだまだ紹介しきれないのですが、台湾火鍋の魅力の一端を伝えられたのなら幸いです。過去のデジカメデータをチェックしていたら、結構な数の火鍋写真が発掘されてびっくり。私自身も結構、好きだったんだなぁと気づかされました。
因みに今、私が食べたいのは「羊肉火鍋」。台湾南部の高雄市岡山区あたりに有名店が多くて、ぜひそちらで羊肉の鍋を楽しんでみたいです。
10年以上前、日本在住の台湾人の鍋パーティーにお呼ばれした時に振舞われたのが羊肉火鍋だったのですが、撃沈してしまった悔しい思い出があります。
「おでんだよ~」って言われて、パカッと蓋を取ったらおでんの具材とぶつ切り羊肉がたっぷり入った漢方鍋。そしてその時は「ちょっと無理です。ごめんなさい」でした。
あの頃はまだ私も若造で、羊肉の魅力に気づいていませんでした。
そして時は来ました。今の自分は羊肉大好き&漢方OKオヤジに成長しました。引き続いて私自身の火鍋道をまい進したいと考えております。
で、台湾で火鍋、おススメですよ。訪台の際には、ぜひどうぞ!
こちらのサイト(note)からもご覧いただけます。
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