「一生懸命やっているのに、なぜか昔ほどうまくいかない…」「うちの技術は確かなはずなのに、お客様が振り向いてくれない」などなど、『売上不振』や『人材不足』に悩みながらも、日々の業務に追われ、誰にも本音を話せずにおられる経営者さんは、少なくないのではないでしょうか。
その行き詰まり感があるとしたら、「会社の外」、つまり世の中や市場の「変化」に原因があるのかもしれません。
このブログを読むと、こんなことが分かります。
- そもそも、なぜ会社の「外」に目を向けることが大切なのかが腑に落ちる
- 「PEST」や「5つの力」といった小難しい言葉が身近なことに思えてくる
- お客様の「本当の気持ち」や「見えないライバル」に気づくヒントが得られる
- 「何から始めようか」と、明日への具体的な一歩が踏み出したくなる
目次
「外部環境分析」って、なんだか難しそう
「大きな話」と「ご近所の話」に分けるとスッキリ
世の中の風向きを読む「PEST分析」
皆さんの商売を揺さぶる「5つの力」
お客様の”本音”と”本当のライバル
完璧じゃなくていい
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皆様の成長促進パートナー
中小企業診断士のまっちゃんです。
中小企業の現場を駆け回り、組織改革や事業承継などの課題解決をお手伝いしています。
「外部環境分析」って、なんだか難しそう
さて、いきなりですが、「外部環境分析」なんて言葉を聞くと、どうでしょう?なんだかちょっと、身構えませんか。分かります、分かります。なんだか難しそうなレポートとか、よく分からないカタカナ言葉が並んでいそうで、「うちはいいや…」って思いますよね。
でも、今回お伝えしたいのは、そんな難しい話ではありません。 もっとシンプルで、もっと身近なことです。現場でいつも感じることは、多くの経営者さんは自分の会社のことや商品やサービスといったことは、本当によく見ておられます。なので、少しだけ会社の外に目を向けると、今まで見えなかった道がパッと開けることがよくあります。
外部環境を知るということは、「会社の外で今、何が起きているかを知るための、天気予報」みたいなことだと思っています。例えば、天気予報を確認したおかげで傘を忘れずに済んだ経験をお持ちの方も多いはず。ビジネスも世の中の風向きを少しだけ知っておけば、次の行動がもっと楽に楽しく進められるのではと思います。

「大きな話」と「ご近所の話」に分けるとスッキリ
それでは、その「会社の外」って、具体的にどこを見ればいいのでしょうか?私は2つに分けて考えることをお勧めしています。「日本全体、あるいは世界全体の大きな話」と「うちの町の、ご近所の身近な話」の2つです。
「大きな話」は、専門用語でマクロ環境なんて言ったりもします。例えば、消費税が上がるとか、新しい法律ができるとか、AIみたいな新しい技術がどんどん出てくるとかです。私たちの会社の努力だけでは、どうにもコントロールできそうにない大きなうねりみたいなものを指します。
「ご近所の話」はミクロ環境と言います。これは、皆さんのお店のすぐ近くの競争相手のことや、いつも商品を卸してくれる業者さん、そして何より大切なお客様たちのことを指します。「大きな話」よりも、もっと身近で日々の売上に直接関わってくるお話です。
まずはこの「大きな話」と「ご近所の話」を、ごちゃ混ぜにしないで、「ふむふむ、世の中は今、こんな感じなのか」と「さて、うちの周りはどうなってるかな」って、少しだけ意識して情報を眺めてみることです。これだけで、頭の中がスッキリしてきます。

世の中の風向きを読む「PEST分析」
では、「大きな話(マクロ環境)」をどう見ていけばよいのでしょうか。現場で勧めしているもの一つに、「PEST(ペスト)分析」というものがあります。名前は小難しそうですが、中身はとってもシンプルなものです。
P (Politics 政治・法律) 「あぁ、インボイスが始まったなぁ」とか、「最低賃金がまた上がるのか」とか、国のルールや法律の動きのことです。
E (Economy 経済) 「ガソリン、高いよなぁ…」「円安で、仕入れが本当に大変でさぁ」といった景気やお財布事情の話で、肌で感じるものです。
S (Society 社会・文化) 「最近、健康志向の人が増えた気がするな」「若い子は、やっぱりSNSで『映え』を気にするんだねぇ」みたいな、世の中の流行りや暮らし方の変化のことです。
T (Technology 技術)
「もう、キャッシュレスが当たり前になっちゃったね」「AIって、うちの商売にも関係あるのかな?」といった、新しい技術の話のことです。
どうでしょうか?日々のニュースや、お客様との世間話で出てくるようなことばかりではないでしょうか?大切なことは、これらの出来事に対して、「これって、うちの会社にとってチャンスになるのかな?それとも、ちょっと気をつけないといけないピンチなのかな?」って、自分の商売に引きつけて考えてみることです。これだけで、ただの情報が未来を考えるための材料に変わってきます。

町の小さな印刷会社が見つけた新しい商機?
従業員5人の小さな印刷会社さんを想像してください。この会社はチラシや名刺の印刷が主力でしたが、近年デジタル化の波で受注が減り続けていました。そこで、PEST分析の視点で世の中を見直してみることに。
- P(政治・法律) 個人情報保護法の強化で、企業が機密文書の処理に困っている
- E(経済) う~ん、なんだろうか?
- S(社会・文化) コロナ禍で在宅ワークが増え、家庭で印刷する機会が減った一方、オンライン会議用の資料需要が増加してるな
- T(技術) 小ロット・短納期印刷技術の向上が目覚ましいな
この分析から、「機密文書の印刷と適切な廃棄処理をセットにしたサービス」と「オンライン会議用の高品質資料印刷」という新しい商機に気づくことに。従来のチラシ印刷の売上減少を補って余りある新規事業を立ち上げることができれば、売上は前年比を上回る回復も可能かも!
皆さんの商売を揺さぶる「5つの力」
次に、「ご近所の話(ミクロ環境)」を見ていきます。その一つに、「ファイブフォース(5つの力)分析」という見方があります。皆さんの商売を、いつも5つの方向から引っ張ったり、脅かしたりしている「力」があるから、それを意識してみようという考え方です。運動会などの綱引きをイメージして解説したいと思います。
① 同業者との綱引き(競争) これは一番分かりやすい綱引きです。ご近所のライバル店とのお客さんの取り合いです。
② お客さんとの綱引き(交渉力) 「もっと勉強してよ!」ってお客さんにしょっちゅう言われるのは、この綱引きで、ぐいぐい引っ張られている状態です。
③ 仕入先との綱引き(交渉力) 「この部品は、ウチからしか買えませんよ」なんて言われたら、仕入先の方が力が強いということです。こっちは引っ張られてしまいます。
④ 新しいライバルの登場(新規参入) あなたの商売が誰でも簡単に始められるものだと、新しい人がどんどん綱引きに参加してきて大変になります。
⑤ 「うちじゃなくてもいいや」の力(代替品) これが意外と気づきにくい、やっかいな力だったりします。例えば、町の喫茶店にとっての綱引きの相手は隣の喫茶店だけじゃなく、実は「コンビニの150円コーヒー」だったりするといったものです。
この5つの綱引きについて、「うちの店は、どの綱引きが一番きついかなぁ?」って考えてみると、「ああ、だからうちは利益が出にくいんだな」とか、「じゃあ、この綱引きが弱いところで勝負しよう」とか、具体的な作戦が見えてきます。

理容室が発見した「本当のライバル」?
例えば、ある地方都市の理容室さんを想像してください。店主さんは「近所に新しい理容室ができて、お客さんを取られている」と悩んでおられます。5つの力で分析してみると、本当の脅威は別のところにありました。実は、若いお客さんの多くが「1000円カット」や「セルフカラー用品」に流れていたことが分かりました。さらに、コロナ禍で在宅ワークが増えたことで、「身だしなみにお金をかける必要性」自体が下がっていることも分かりました。
そこで店主さんは発想を変えて、「短時間で済ませたい忙しい人向けの丁寧なカット」と「自宅でのヘアケア相談サービス」を新たに始めました。結果として、従来のお客様を維持しながら、新しい客層も開拓することができたのです。こんな未来を創造できないでしょうか?
お客様の”本音”と”本当のライバル”
天気予報だの綱引きだのとお話ししてきましたが、結局は全て「お客様」に繋がっているものです。お客様が何を考えて、何を求めているのか?これが一番知りたいことだと思います。まずは、お客様がポロッとこぼす「○○できなくて困ってるのよ」「もっとこうだったら、嬉しいんだけどねぇ」というボヤキや願いに耳を傾けてください。成功につながる宝物が埋まっているかもしれません。
さっきの「代替品」の話も、とても大事です。例えば、「お客様が店に来ない時って、どこで何をしているんだろう?」って想像してみると、今までライバルだとも思っていなかったコンビニやネットのサービスが、実は本当のライバルだった、なんてことに気づかされることがあります。「本当のライバル」の姿が見えてくるとシメタモノです。きっと戦い方もガラリと変わってくるはずです。

完璧じゃなくていい
ここまで色々な角度から「会社の外」を見るお話をしてきました。私が一番お伝えしたかったのは、いきなり100点満点の分析レポートは作らなくてよいということです。100点満点であらねば!と考え始めると途端に面倒くさくなって、結局、何もしないままになってしまうからです。
気になったニュース記事をスマホで写真に撮っておく。お客様との会話で「おや?」と思ったことを、手帳の隅にメモしておく。まずは、そこから始めてみてはどうでしょうか。「PEST」とか「5つの力」のような見方も知っているだけで、集めた情報が頭の中で整理されていくようになります。
会社の周りの変化にアンテナを張り続けていると、ある日ふと、「あ、これだ!」「こうすればいいのかもしれない!」っていう、次の打ち手が見えてくる瞬間が必ず訪れると思います。誰にでも取り組める未来のための大切な習慣は、会社の外に目を向けて日々の情報収集をほんの少し工夫することだけです。

【今日から始める!7日間チャレンジ】
「何から始めたらいいか分からない」なら、気軽に取り組める7日間チャレンジはどうでしょうか。
1〜2日目:PESTアンテナを立てる 朝のニュースチェックの際に、「これはP・E・S・Tのどれに当てはまるかな?」と意識する。1日1つでもOK!
3〜4日目:お客様の声に耳を澄ます お客様との会話で「最近〜で困ってる」「こうだったらいいのに」という言葉が出たら、スマホのメモ機能に記録する。
5〜6日目:ライバル店をこっそり観察 直接の競合店だけでなく、「お客様がうちじゃない時間に、何をしているか?」を想像してみる。意外な発見があるかも。
7日目:振り返りと気づきの整理 一週間で集めた情報を見返して、「これは面白いな」「うちに関係ありそうだな」と思うものを3つ選んでみる。
この7日間で、きっと今まで見えなかった「会社の外」の風景が見えてくるはずです。完璧を目指さず、「ちょっと面白そう」という軽い気持ちで始めてみてください。
この経営ブログが、皆さんの経営力向上の一助となれば嬉しいです。 私見も含まれていますので、ぜひ皆さんの貴重なご意見やご感想もお聞かせいただけると、私も学びが深まります。
「外部環境分析、やってみたよ!」「こんな発見があったよ!」といった実践報告もお待ちしています!
ちらのサイト(note)からもご覧いただけます。
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